今回は最近あった実際の話から…
これは、非常勤講師として講義を行っている専門学校の学生さんからの質問だったのですが…。
その学生さんのご兄弟の方が通院されている整骨院での話だそうです。
そのご兄弟の方はもともと慢性的な腰痛があり、”手の痺れ”の症状でその整骨院に通院されていたそうですが、その症状が治まってきたときにこう言われたそうです。
『猫背からくる神経圧迫で手の痺れや腰の痛みがある。 手の痺れも、最終的にはインナーマッスルを鍛えないとまた再発するので、インナーマッスルの強化が必要になる。』
確かに、症状の出ている部位や、症状の機序(出始めたきっかけ)によっては、体幹部のローカル筋(インナーマッスルのこと)が関与している場合もありますが、何でもかんでもインナーマッスルが原因とは限りません!
また、このご兄弟の方はこうも言われたそうです。
『6か月間の治療費約90,000円(楽トレ(インナーマッスルを物理療法機器EMSで収縮させるもの))+専用パッド(6か月分)約9,000円とのセットを、前払いで合計約100,000円です!』
実はこの、施術と物理療法機器EMSでインナーマッスル(ローカル筋)を鍛えるのをセットにして回数券などを販売する商法は、数年前から整骨院業界で流行ってるんです😰
ちなみに、他の知人からも以前相談いただいたことがあって、その方も同じような内容のものを『回数券だと10回分の料金で12回分利用でき、36,000円です!』と言われたそうです…。 しかもその知人は、まるで”その機械を使わないとインナーマッスル(ローカル筋)は鍛えることができない”というような事まで言われたそうです😱
ここまでくると、ちょっと詐欺です。 確かに、体幹部のローカル筋を鍛えるのは多少コツがいりますが、一般の方でも決して鍛えられないことはありません!
実際に、当院では治療のなかでローカル筋のトレーニングが必要な場合は、必ずやっていますし、多少の個人差はありますが、最終的には皆さんローカル筋を使えるようになります😉
ここで皆さんに、なぜ物理療法機器EMSを用いたローカル筋(インナーマッスル)のトレーニングがお勧めできないか、その理由をお話ししたいと思います!
【その①:消費者が接する製品の許可や取り締まりなどを専門に行う”アメリカ食品医薬品局(FDA)”では、体型を変化させるような効果は否定されている】
→ちなみにこれは、物理療法機器EMSでいわゆる”6(シックス)パック”ができるのか、また、ダイエット効果が得られるのか、といった消費者からの問い合わせに対する”アメリカ食品医薬品局(FDA)”の回答です。以下に、日本語に訳されたものを記載しておきます。
Q.FDAの規制要件を満たした電気筋肉刺激装置を使用すると、多くの腹筋、胃のクランチ、その他の腹部運動と同じ種類の効果が得られますか?
A. これらのデバイスのみを使用しても、「6パック」腹筋は得られません。筋肉に電流を流すと、筋肉が収縮することがあります。電気で筋肉を繰り返し刺激すると、最終的にはある程度強化され、引き締まった筋肉が得られるかもしれませんが、現在入手可能なデータに基づいて、食事や定期的な運動を加えずに外見に大きな変化をもたらすことはありません。
Q.しかし、FDAは病状を治療するために電気筋肉刺激装置をクリアしていませんか?
A. はい。FDAは、病状の治療における処方箋使用のために多くの電気筋肉刺激剤をクリアしました。医師は、筋肉の再教育、筋肉のけいれんの弛緩、可動域の拡大、筋肉の萎縮の予防を必要とする患者、および脳卒中、重傷、または大手術から通常生じる他の病状を治療するために、電気筋肉刺激装置を使用することができる。繰り返しますが、これらの装置を使用することの効果は、主に患者が病状による筋肉機能障害から回復するのを助けることであり、外観に影響を与えるほど筋肉サイズを増加させることではありません。
これは、身体の表面上にある腹直筋という、いわゆる”6パック”の筋肉に対する効果について回答されているのですが、今回の整骨院でいわれたインナーマッスルはこの腹直筋よりもさらに深部に位置する筋肉です。
皆さんは、最も通電しやすい腹直筋でも体型に変化をもたらすような効果が得られないものが、より深部に位置するローカル筋(インナーマッスル)にどれほどの影響があると思いますか??
また、注意しなければならないのは、これらの研究は呼吸器・循環器などの「疾患を抱えた人」の「リハビリ」としては EMS が有用である可能性を検討したものである点です。言い換えると、健常者への効果を示したものではありません。
【その②:物理療法機器EMSによる効果は一時的になる可能性が高い】
→ご存じの方も居るかもしれませんが、ヒトの筋肉は脳からの電気信号によって収縮(動き)します。物理療法機器EMSは、脳からの電気信号の代わりに外的に電気を通電することで筋肉を収縮させます。
ボディビルダーの方を思い浮かべると判りやすいですが、筋肉は鍛えていくと発達してきます。これは脳や、筋肉が学習できる組織だからです。つまり、筋肉をトレーニングするときに脳からの信号発信を繰り返すことで電気信号の伝達が学習され、収縮する筋線維の量が多くなり、筋肉も1つひとつの筋線維がサイズアップすることで、筋肉が発達します。
一方で、物理療法機器EMSを使用した場合は、脳からの電気信号でなく外的に電気を通電して筋肉を収縮させてますので、脳から筋肉への電気信号の伝達は学習されていない状態です。
これが何を意味するかと言えば、10,000歩譲って、もし仮に運良く物理療法機器EMSによってローカル筋(インナーマッスル)が鍛えられた場合でも、時間がたてば、脳からの電気信号の伝達が学習されていないければ、やがてローカル筋(インナーマッスル)は衰えていくということです。
うーん、まさにリピーター獲得のための錬金術、そして“骨盤矯正”にならぶ負のSDGs😱
いかがですか!?
今回のようなセット販売、実は整骨院向けにそのノウハウをレクチャーすることで収入を得たり、フランチャイズ化している企業もあるんです😱
存続しないと患者さんに対する医療サービスの提供はできませんので、ある程度の収入を得るのは必要なので否定しませんが、当院は接骨院(整骨院)は医療の一端を担っているという気持ちで日々の業務にあたっています。
痛みなどの症状は、患者さん自身にしかわからないものです。なかには、日常生活に本当に支障をきたし、藁をもすがる思いで整骨院を受診する患者さんもいらっしゃいます。
その藁にもすがるような思いで、本当に症状に悩まされている患者さんに対し、その弱みに付け込むように暴利な費用を請求するやり方をしている同業者がいるのは、本当に残念です😰
現在、他の医療施設に通院中で、身体のことでお悩みの方がいらっしゃったら、ぜひセカンドオピニオンとして当院へご連絡くださいね!
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